お尻を出してください
「はい、お尻を出してください」と彼女は言うなり、威勢よく私のパジャマのズボンを下ろした。
三年前、何の因果か私は結核に罹ってしまい某病院へ入院することになった。入院生活が始まった次の日の早朝、まだ若い看護師さんがやって来ると、私のパジャマを下ろして、尻にブスリとストマイの注射をするのであった。なんと無慈悲な看護師さんなんだ!
ところが、その看護師さんは病棟中の人気者であった。結核患者の多くは歳をとり、長い入院生活で疲れきり、人生に希望を失いかけている者もいる。だが彼女が病室に入ってくると、どの患者の顔にも明るさが浮かぶのだった。彼女は一人ひとりの患者の間を時間をかけて回っていく。患者の自慢話を聞く。様々な愚痴を聞く。何ヶ月も誰ひとり見舞いに来ない患者の前では、とりわけ長い時間話をしていくのだった。
──「貴方のお尻は可愛いのね」と、デイトの喫茶店で、2年間付き合ってきた彼女は冗談っぽく言った。そう言われても仕方がない、彼女は病院で私の尻をさんざ見てきたのだから。
双葉徹
遠恋婚
ずっと、遠距離恋愛だった。大学4年の夏休み、「つき合おう」と言われた翌日から、彼は一人旅で国内外を放浪しはじめ、放置プレイは卒業まで続いた。社会人になると、予定外に私が名古屋に配属されてしまい、本格的に遠恋生活がスタート。一年後に東京帰還を果たしたものの、今度は彼が日本を離れることに。海運会社に勤める彼が、航海士の免許を取得し、船が勤務地兼生活場所となったからだ。約半年間を海の上で過ごし、日本に帰って三ヶ月ほどは休暇をもらえる。が、次に船に乗れば、また半年帰ってこない。それを2回か3回くり返したところで、私から迫った。というか、懇願した。「結婚してしてしてして、してーーーーー!!!!!」と。
つき合って4年が経っていたその頃には、私は、彼との恋愛で得るものなんて何もないと気づいていた。「もっと一緒にいたい」という気持ち以外に。それまでにも、一緒にいられない寂しさを理由に、別れを切り出したことが何度もあったが、その度に「嫌だ」と拒否された。彼は断固としていた。料理も、おしゃれも、上手なHもできない私なのに。それなら、私をお嫁さんにして。単純な理屈だった。そして、脅迫的な逆プロポーズに、プロポーズ返しで応えてくれた。そうして私は、一度にたくさんのものを得た。新しい苗字と、自尊心と、一人で住むには広めの部屋と。彼は今、船の上だ。よく分からないけど、彼は私のことが好きでたまらないらしい。でも、一年に三ヶ月しか一緒にいられない生活は変わらない。
ほりえり
忘れていた初恋
私は疲れてました。
仕事もうまくいかず、恋愛も空回りして、光が何も見えずに苦しみ疲れていました。
ある日、一本のメールを受け取りました。小学校の時通っていた塾が一緒だった子。6年生の時、好きだった男の子。卒業してから17年も会っていないのに、突然元気ですかとのメールにドキドキしました。何度かメールを送りあって会う約束をしましたが、久しぶりの連絡なんて大体、宗教や何か壷でも売りつけられるのだろうと、半信半疑で会いに行きました。これで、また騙されたりしたら、本当に立ち直れない位自信の無い私がほんの一筋の光を求めて昔好きだった子に会いに行きました。やんちゃだった彼の顔は優しく、(こんな人と結婚できたらどんなに幸せだろう)と思いました。
でも、なんで連絡してきたのかと、私は疲れていてもし騙すのであれば先に必要な金額だけ教えて欲しいとお願いしたら、彼は笑って、自分も海外転勤を終えて帰ると同時に彼女と別れ一から始める状態で『初心に戻ろう。初恋の人に会ってみよう』と思い共通の知り合いから無理に連絡先を聞いたとのこと。男性不信な私から信頼を得ようと彼は毎日連絡を取ってくれて結婚をしてくれました。
そらゆみ
幸せにしてあげたい。
二人の出会いは同じ大学の同じ学科。
入学から2日目、同学科の人だと挨拶した私に、誰ですかと失礼なことを言った彼。良い出会いとは言えませんね。
始めは10名程度の仲良しグループの一員で、特に意識することもありませんでした。半年くらいはお互い別に好きな人がいて、恋愛相談をしあったり、その相手とうまくいくように応援しあったりしていました。
彼の失恋を知ってからも変わらず恋愛相談を続けていた私。私が振られたその瞬間も彼が隣にいました。
もうどうしようもなく涙が出て家にこもりっきりだった3日間。彼はずっと傍にいて慰めてくれました。そして、私には自分がいないとだめなんだ、幸せにしてあげたいと思うようになったと告白してくれました。この言葉で一瞬で彼におとされてしまい今に至ります。
幸せにしてあげたいと言ってくれたあの言葉が、彼との結婚の決め手になりました。
ゆゆ
覚悟
結婚を考えられる人としか付き合わないという彼とお付き合いを始めたのが1年半前。付き合い始めた頃から、彼はいつも「結婚しよう」と言ってくれていましたが、私は結婚にまでは踏み込めず、冗談っぽく交わしていました。
そんなときに、東北地震があり、私の地元が被災地になってしまいました・・・。職場で派遣できる職員を探していると言われ、地元東北の役に立ちたいと思い、「行きたい」と彼に言いましたが、彼は「生まれ育った地元の状況を見て、鬱になって帰ってくるのではないか」と反対でした。それでも、彼の意見を聞かず、派遣を希望して、職場から帰ってきた夜。彼に、「希望したから、もし鬱になって帰ってきたら、私と別れてもいいよ」と覚悟を決めて話すと、「俺も鬱になったお前の面倒をみる覚悟をしたから」と・・。私には、この人しかいないと、結婚を決めた瞬間でした♡
なめ